
静けさを生む、直線と余白のデザイン
和モダンの空間づくりにおいて核となるのが、「直線美」と「余白(間)」の意識です。
日本建築では昔から、自然を模倣するような有機的な曲線よりも、水平・垂直の線で構成された、整然とした美しさが尊ばれてきました。和モダンではこの美意識を現代の設計思想に活かし、建具や家具、窓、照明の配置までもが計算されたラインで構成されています。
水平・垂直のラインを多用
和モダンでは、デザインの基本に直線の美しさを置いています。
障子や襖(ふすま)、格子戸などの伝統的な建具は、縦横の線で構成されており、空間に自然な秩序を与えます。
また、現代的な空間でも、天井の梁やフローリングの目地、家具のエッジなどに直線を取り入れることで、静謐で理性的な印象を生み出します。直線は空間にリズムを与え、視覚的にも奥行きや広がりを感じさせる役割を果たします。
形そのものの美しさを追求
和モダンの美しさは、「足し算」ではなく「引き算」の発想から生まれます。
不要な装飾や派手な色を控え、形の端正さ・素材の風合い・影の表情といった“本質的な美”に焦点を当てます。
たとえば、取っ手のないフラットな建具、見せる収納ではなく隠す収納、光沢を抑えた自然素材の床や壁などが代表例です。
こうしたデザインは、空間に静かな緊張感と凛とした佇まいをもたらし、空間自体が芸術作品のように感じられることもあります。
余白による、落ち着き
空間に「抜け」を作ることは、和モダンにおいて非常に重要です。
窓を低く横長に設ける、建具を開けると隣の部屋や庭が見通せる、といった設計により、空間の連続性が生まれます。
この「視線の抜け」は、物理的な広さだけでなく、心理的な開放感や落ち着きにもつながります。
また、「余白」は意図的に“何も置かない”ことで空間の静寂を強調し、そこに季節の草花や一輪挿しのような最小限の装飾があるだけで、空間の美が際立つのです。